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「どうしてこんな変な問題出すかなぁ?」
読み物としても面白い(?)
社労士試験の問題です。
いやまぁ面白がってもしょうがないのですが。
きっと試験委員のささやかな心配りなのでしょう。
いや、違うか。








1:外貌の醜状障害(労災)



社労士試験では、たまに突拍子もないトンデモ問題が紛れており、
そのあまりの極端さ(もちろんそれなりの出題意図はあるわけですが)に
「こんなもんわかるわけないだろ!」
「こんなもん間違えるやついるの?」とか思ったりして、
辛い試験勉強の一時の息抜きになったりします。

例えば以下の問題。

業務上外見に障害を負った場合に労災認定されるかどうかの
基準に関する問題です。



平成23年労災選択式
(前略)
なお、「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいう。外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、顔面部にあっては、【 D 】以上の瘢痕または【 E 】以上の組織陥没に該当する場合で、人目に付く程度以上のものをいう。



当てはまる可能性のある選択肢は以下8つ。

①小豆粒大面
②鶏卵大面
③500円硬貨大
④10円銅貨大
⑤直径1センチメートル
⑥直径10センチメートル
⑦テニスボール大面
⑧手のひら大

・・・・・・

いや、知らんし・・・

かといって諦めてしまうと、ほぼ足切り不合格確定です。

ちなみに正解は、
D 鶏卵大面
E 10円銅貨大
です。

私はこの問題を初めて見た時、
こういった基準は、測るものによって大きさがぶれる可能性のない、
客観的に定義されたものでないとダメだろうと思ったのと、
労災が認められるには相当に厳しい基準だろうとの思いから、
D 直径10センチメートル
E 直径1センチメートル
としました。

そもそも「大面」て意味がわからんし。

でも、「大面」の意味を知り、答えを知った後で振り返ると、
なかなかどうして正答を導き出せなくもない絶妙さ
思わず苦笑してしまいます。

まず小豆粒大面は小さすぎます。

テニスボール大面は球形なので、表面積が縦長の顔面には適しません。

手のひら大は、人によってサイズのぶれが大きすぎます。

そして10円銅貨大ですが、これについては、
「そもそも500円玉、10円玉ってどのくらいの大きさなんだろう」と思い、
実物を実際に顔面に当ててみるため財布を探してみたところ、
500円玉が無く10円玉しかありませんでした。

そう、500円玉は持っていないんです。

その場ですぐに正確な大きさを測定できる可能性が最も高いのは、
選択肢の中では10円玉しかないのです。

1センチ、10センチは、定規やメジャーでも持ち合わせていないと測定できません。

このような知識とは別の思考が、選択式試験では求められるわけです。





2:通勤災害、業務災害



労災の通勤災害、業務災害はトンデモ問題の宝庫です。



平成25年労災択一式問7
通勤の途中で怨恨をもってけんかをしかけて負傷した場合、通勤災害と認められる。



・・・いや、ダメでしょ。


正解は×です。



平成24年労災択一式問1
寝過ごしにより就業場所に遅刻した場合は、通勤に該当することはない。



・・・なんでやねん。


正解は×です。

この手の問題は、常識的な判断で解ける場合が多いのですが、注意したいのは
「たまに常識的判断が誤りとなること」
「日本語を読み間違えること」です。

例えば2問目の文末が「・・・通勤に該当すること『がある』」となっていたら、
正解は〇となります。

常識的判断に頼らずに知識を蓄積することはもちろんですが、
こういった読み誤りは、すなわち「甘く見ていると痛い目を見る」ということです。
不思議なもので、このようなケアレスミスも、勉強を重ねるほどに減っていくものなのです。

「問題文を正確に読む」

こうして言葉にすると当たり前すぎて軽んじがちですが、
試験の超重要な基本スキルの一つです。





3:労働時間(労基)



労基の場合は少し視点が違うかもしれません。



平成30年労基択一式問1
貨物自動車に運転手が二人乗り込んで交替で運転に当たる場合において、運転しない者については、助手席において仮眠している間は労働時間としないことが認められている。



いや、確かに寝てはいるけど・・・酷すぎでしょ。


正解は×です。


問題単体で見れば「そんなバカな」で終わりですが
これが現実的に、とある運送会社の上司が部下に対して
「仮眠した場合は給料払わんからね。だって寝てるんだから働いてないじゃん」
と言っていたとしたらどうでしょう。

わりとリアルにありそうですよ。

実際そう言われたら納得しちゃいそうですしね。

そういったことを、労基法は許していません。

使用者の横暴を防ぐ、刑法的な側面もあるのが労基法の特徴です。





4: 療養費(健保)



具体的な事例が制度に当てはまるかどうかを判断する事例問題も、
最近の社労士試験では一般的になりました。



平成30年健保択一式問6
臓器移植を必要とする被保険者がレシピエント適応基準に該当し、海外渡航時に日本臓器移植ネットワークに登録している状態であり、かつ、当該被保険者が移植を必要とする臓器に係る、国内における待機状況を考慮すると、海外で移植を受けない限りは生命の維持が不可能となる恐れが高い場合には、海外において療養等を受けた場合に支給される療養費の支給要件である健康保険法第87条第1項に規定する「保険者がやむを得ないものと認めるとき」に該当する場合と判断できる。



正解は〇。

これで認められなければ一体どういうときなら認められるのよ、
と突っ込みたくなるほどの極限状況ですが、
ここまでくるとなんだか医療ドラマか何かのような
シチュエーションです。

ただ、こういった事例の線引きについては、
「あれがOKなのに、なんでこれはダメなの?」といったトラブルに
必ず発展する
ので、
必然的に法律以外の通知、通達等で具体的な事例の補完を図ることとなり、
結果として社労士試験にも出題されることとなるわけです。





5:まとめ



他にもまだまだ挙げたい問題がありますが、
きりがないのでこの辺で。

もちろんそんな極端な問題は少数派で、
それができるかできないかで合否が分かれることは少ないです。

ただ、こういった問題が「選択式」で出されると怖いのが社労士試験。

手も足も出ず足切りで即不合格となるからです。

手も足も出ない状況で、諦めずにどう正答をはじき出すか、

その忍耐力こそ、試験に求められる最重要能力なのです。





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