
学習している中で、
介護保険法ほどおかしな内容もありません。
これって絶対おかしいです。
この記事読めば、きっと皆さんもそう思うと
思うんですが、どうでしょう?
1:特殊な(おかしな?)介護保険法
介護保険法も社労士試験の試験範囲です。
社会保険一般常識の科目の一つとして
出題されます。
(しかも出題頻度が高い)
日頃よく耳にする法律ですが、試験勉強として接してみると、
他の分野に比べて特に強い違和感を覚えます。
もちろん悪い意味で。
前回の表現を借りれば、介護保険法は
「常識的に理不尽な決まりごと」の
最たるものです。
不愉快を通り越して、逆にその完成度に感動するくらいです。
芸術的悪法と言っていいでしょう。
高学歴の官僚が全力を出すと、ここまで「隙なく隙だらけ」の
法律を作り上げられるようです。
どうしてそうなったのか、その背景については、
以下のウィキペディアの引用が
最も簡潔かつ的確です。
老人福祉法の財政の破綻、医療分野を切り離して老人保健法を制定したものの、これも破綻した。そのため、新たに高齢者福祉を扱うシステムが必要となった。そこで登場したのが介護保険法である。それ以外に老人の社会的入院が非常に多く、介護分野において新たな社会保険方式が必要となったという経緯もある。
ここにある通り、社労士試験の他の分野と異なり、
最初に「破綻」がある法律なのです。
日頃、新聞やニュースなどで健康保険の破綻、年金の破綻がよく取り上げられますが、
一応まだ破綻してはいないことになっています。
介護保険法は、既に破綻したシステムの解決から始まっています。
さて、もうこれ以上破綻しないようにするにはどうすればよいか。
言うまでもなく
出し惜しみ
と
巻き上げ
に尽きるというわけです。
2:介護保険は強制保険
介護保険は強制保険です。
以下の二つに当てはまる場合は、
強制的に保険料が徴収されます。
①市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者
(第1号被保険者)
②市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者
(第2号被保険者)
①の条件は「65歳以上の者」ですので、
貯蓄のない無職の年金生活者でも保険料が取られます。
国民年金しかもらえない場合、
月65000円前後の年金額で
生活しなければなりません(生活できない)が、
保険料は取られます。
国民年金保険料の法定免除が適用される
生活保護受給者でも
保険料は取られます。
また、介護とは縁遠い現役サラリーマンでも、40歳以上65歳未満なら
保険料は取られます。
さらに、医療保険加入者本人が40歳未満でも、
被扶養者(年上の専業主婦の奥さん等)が
40歳以上であれば、健康保険組合の規約によって
保険料を徴収できるという「特定被保険者」という
制度もあります。
この場合、被保険者ですらないのに保険料は取られます。
3:要介護認定、要支援認定
保険料払っているんだから、
介護が必要になったら当然保険証見せて介護サービスの給付を受けられるんだよね、
と思いがちですが、ダメです。
健康保険と異なり、
保険料を払う義務を負うことが、
イコール保険の利益を享受する権利を得ることにはなりません。
介護サービスの給付を受けるためには、
市町村に申請し、「要介護認定」「要支援認定」を
受けて初めて可能になります。
当然、認定が却下される場合もあります。
金だけは無理やり取りますが、
サービス給付を受けられるのは「まぁあんたならしゃーないね」と
市町村に認められた者だけです。
しかもその認定には有効期限があり、これがまたけち臭い。
有効期限は「要介護認定等が効力を生じた日から当該日が属する月の末日までの期間と6月間」、
つまり最大でたった7月間だけです。
(例外的に伸びる場合でも最大13月を越えることはありません)
そして認定の効果は「申請のあった日にさかのぼって」効力が生じます。
つまり、申請してから認定が認められたと判明するまでの期間は、
認められるかどうかがはっきりしない状態なので、怖くて介護サービスを受けられません。
さらに、第2号被保険者については、
「要介護状態または要支援状態の原因となった心身の障害が、がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)、関節リウマチ、初老期認知症、脳血管疾患等の特定疾病によるものでなければ、介護保険の介護給付等の対象とされない」
とされています。
つまり第2号被保険者は、
保険料は取られているのに、
死にかけか寝たきりでなければ保険サービスの給付を得る権利すら得られません。
4:保険給付の内容
保険給付の内容は介護保険法40条に規定されています。
「さぁこんなにたくさんサービスがあるよぉ!」と言わんばかりの
種類の豊富さで、その多くは、かかった費用の「9割」が保険給付となるため、
1割負担で介護サービスが利用できます。
ただし、
・所得が規定を超えている場合は、給付が
「8割」もしくは「7割」となる。
・居宅介護福祉用具購入費は、当該居宅要介護被保険者の日常生活の自立を助けるために必要と認められる場合に限り支給するものとする。
・居宅介護住宅改修費は、当該住宅改修が当該居宅要介護被保険者が現に居住する住宅について行われたものであり、かつ、当該居宅要介護被保険者の心身の状況、住宅の状況等を勘案して必要と認められる場合に限り支給するものとする。
といった例外もきっちり規定されています。
5:市町村が行える事業
介護保険法には、市町村が行える事業として
・介護予防日常生活支援総合事業
・介護給付等に要する費用の適正化のための事業等の事業
・被保険者の保険医療の向上及び福祉の増進を図るための総合的な支援を行う事業
・被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業
・要介護被保険者を現に介護する者の支援のために必要な保健福祉事業
を行うことができると規定されています。
介護に関係するあらゆる名目で、
出向先、天下り先を作り放題
というわけです。
6:まとめ
介護保険法は平成9年制定、平成12年施行(試験によく出る)の法律です。
それからもう20年以上経過しています。
その間、日本は加速度的に超少子高齢化の一途を辿るばかりです。
今後も介護保険制度の維持のため、介護保険料の値上げ、
加入年齢の引き下げは避けられないでしょう。
そしてそれが更なる超少子高齢化を招くことに繋がります。
つまりそう遠くない未来、
日本は滅びます。
そのためには、どうしたらよいのか?
そこまで考えてしまうと、社労士試験の学習は進みません。
飽くまで試験は試験。
そういうものだと割り切ることも、試験勉強の一環なのです。
>>次回【変わったトンデモ社労士試験問題5選】
>>前回【「常識的に」変だと思う、社会保障の決まりごと】
【The 社労士試験のススメ? トップページ】